第33章 【番外編】恋人ごっこ
「び、っくり、した……」
暗闇の中を何事もなく走り抜け、どさっと床に落とされた。
見慣れた先生の部屋は、相変わらず何もない。
「…どうした?」
「え、えっと……?」
「時間はまだまだある。
3日間は、お前の言いなりだ」
「……っ!」
その言い方がなんとなく恥ずかしい。
声にならない声をあげて、どうしたらいいかわからずに固まる。
「じゃ、じゃあ……、
今だけは、好きって言って…?」
「……」
どうしても、不安になるから。
たまには、その声で聞きたい。
抱き上げられながらまるで子犬のように、仰向けに寝そべっている先生の胸板に下ろされる。
顔が、すごく近い。
いつもこれ以上に恥ずかしいことなんて沢山してるはずなのに、恥ずかしい…。
「そうだな、一男女に戻るのも、いいかもしれないな」
先生の髭が頬にあたる。
ちくちくするけど、それが好き。
「……好きだ」
「…!!先生!ずるい、顔、見えない…っ」
「見なくていい」
「やだ!やだ!!」
もがいてその拘束する腕をほどこうとするも叶わず、私はじたばたと暴れるしかない。
こうして3日間、私と先生の壮大な恋人ごっこが、開始された。