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ゆるやかな速度で

第9章 7.合宿01


合宿が始まった初日。
私達は朝早くから学校へ集合し、そこからバスでこの合宿を行う施設まで連れてこられていた。
いつもならもう少し騒がしいテニス部の面々の会話も今は少し静かだった。
そんな私達を集合させて渡邊先生が簡単に合宿の説明をしていく。

「じゃあ、お前らここでの注意事項はこれでも読んどけよー」

そう言って渡邊先生は皆に注意事項が書かれたプリントを前に並んでいる人に渡す。
私もその束から一つを受け取り、書類に目を通す。
そこには注意事項の他にも簡単に合宿中の内容についても触れられていた。

「後は…あ、白石宜しく」
「オサムちゃん、ほぼ丸投げやんけ……」
「まーまー、ええやろ」

私が書類に目を通していると渡邊先生が白石くんへと説明を投げる。
事前に聞いていて知っていた部分もあったからなのか、急に話題をふられても『しゃあないなぁ』と苦笑しながら白石くんは皆の前に出てゆっくりと説明をし始めてくれた。
それを聞いていると、脇にいた渡邊先生から声がかかる。

「あ、【名字】」
「はい」
「【名字】はちょっとこっち来てな」

手で招かれる仕草で呼ばれたので私は皆の輪から抜けて、先生のいる方へと移動する。
そして先生の隣に並び、先生からの言葉を待っていると別の書類を渡される。

「これ、納品書やから」
「えっと…?」

手渡された納品書を受け取りながら私は困惑した表情をしてしまったのだろう。
私の表情を見てから渡邊先生は苦笑しながら『悪い悪い』と言った。

「あー、すまん、説明不足やったわ」

そう言ってから何の納品書なのを1から説明をしてくれる。
この納品書は皆の食事になるお弁当の納品書だった。
朝・昼・晩と業者さんがここへ配達してくれるので、納品書を元に人数分きちんとあるか確認する必要があるとのことだった。
確かにテニス部員全員分となると結構な人数になりそうだから確認も大変かもしれないし、皆のご飯がなくなってしまうのは大変だと思い、しっかりやり遂げなければと内心意気込んだ。
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