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ゆるやかな速度で

第8章 6.変化


四天宝寺中学テニス部のマネージャーになってからまだそれ程日も経っていないというのに、私は私の周りが急速に変化していくのを私は肌で感じていた。

「【名字】さん、おはよう」
「お、おはよう、ごごございます!」

テニス部に入部してからマネージャーの私が朝練後に鍵を職員室へ一旦返しに行くのが日課になっていた。
そんな日課になりつつある鍵を返却してから教室に戻るまでの間に、私はよく色々な人に話しかけられるようになった。

元々、別のクラスになってしまった元クラスメイトの女の子達とは廊下ですれ違う時に挨拶等もしていたが、男の子に挨拶されるようになったのは物凄い変化だった。
四天宝寺の生徒は基本的に明るく元気でお笑い好きな人が多いから、こうして廊下ですれ違うと挨拶等も交わす人も多かったけれど、私の事を知っている程に私に話しかける異性はいなかった。
でもテニス部のマネージャーになったと知れ渡ってから人から話しかけられる事が増えていた。

最初は驚き過ぎてしまい上手く返事が出来なかったけれど、数日もの間に休み時間の度に話しかけられれば私も耐性がついてきたのか、しどろもどろながらも返事を返すことが出来るようになってきていた。
私のおかしな返事も特にからかうこともせずに皆笑顔で『おはよう』と返してくれる事に私は感謝と…そして四天宝寺の学生の優しさを実感していた。
そんな感謝の気持ちを噛み締めながら私がゆっくりと歩いていると後ろから誰かにぶつかられてしまう。

「すまん!」

そう謝罪をされて振り返ってみれば、そこには忍足くんがいた。
彼は直ぐに頭を下げたからか、かぶつかった相手が私だと気付いていない様だ。
私が彼の名を呼んで『大丈夫だよ』と告げると、彼は下げていた頭をあげる。

「なんや【名字】やったんか。でもほんまに怪我とかしとらん?」
「大丈夫だよ。それより…私より先に戻ってたのにどうしたの?」

先に教室へと駆けていったはずの忍足くんが私の後ろから来たので私が不思議に思い質問をすると彼は苦笑しながら答えを教えてくれた。
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