第6章 4.決断
「俺はこっちの道なんやけど」
「私はここからだとこっちかな」
家の方角が逆だった様でここでお別れだなと思うと少しだけ寂しく感じた。
「じゃあ月曜に学校で」
「うん、本当にありがとう!」
私がそう告げると白石くんは笑って手を振ってくれる。
私は彼の背中が見えなくなるまでその場から動けなかった。
そしてその背中は段々と小さくなっていき、完全に白石くんが見えなくなるのを見届けてから私は家へ向けて歩き出す。
そして帰り道の最中に自分の心にどうしたいのか、きちんと自身の心と向き合ったのだった――。
***
「あの、渡邊先生いらっしゃいますか?」
月曜日の朝のHR前、いつもより少しだけ早めに登校して私は職員室に来ていた。
職員室に入って直ぐ近くにいた先生に質問すると『今日は珍しくはよ来てんで~』と笑いながら渡邊先生のいる方を指さして教えてくれた。
休日におばあちゃんに言われた事、そして白石くんに言われた事をずっと考えていた。
そして決意をした私は入部届をしたため、それを握りしめて今この場にいた。
私は教えてくれた先生にお礼を言い、渡邊先生の傍まで歩く。
そして座っている先生の脇に立ち声をかけた。
「あの先生?」
「んー?あ、【名字】か。来ると思っとったで」
そう言って先生はニカッと笑う。
何か書類を書いていたのか机の上にバラバラに紙類が散乱していた。
先生は持っていたペンを置いて私の方へ椅子を回して向いてくれる。
私は先生のその動作をただ黙って見ていた。
言葉が上手く出なかったのは、先程の先生の言葉に驚いてしまい話そうと思ってた内容が少し飛んだせいだった。
「んー、その顔はなんでや?ってとこだろ?」
「は、はい」
「白石から話し聞いとったからなー。俺としても来年以降の事考えるとマネージャーいてくれた方が助かるんよ。1年とか育てなあかんし」
そう言って先生は私に向けて手を差し出す。
最初はなんだろう?と思ったが先生は私の手に持っていたものを受け取ろうとしてくれていると気づき慌てて私はその手の上に入部届を置く。