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ゆるやかな速度で

第6章 4.決断


「じゃあ【名前】!ワイと一緒にテニス部入ろうや!」

その言葉が昨日の放課後からずっと私の頭の中に響いていた。
あまりにも私にとって衝撃的過ぎてグルグルと声が木霊して消えてくれない。
それ程に私の中にあの言葉が響いていた。

翌日の午後。
休日なので部活動にも入っていない私はいつも通りの休日を過ごしていた。
朝起きて朝食、そして家の手伝い、学校の宿題をこなして…と、特に変わらない生活をしていた。
そのはずなのに今の私の頭の中を占めるのはのは昨日の金太郎くんの言葉だった。

あの言葉に対して『うん』とも『無理』とも即答することが出来なかった私。
白石くんには『急なことやから…でも考えてみてくれると嬉しいわ』なんて言われてしまった。
あの後、どうやって帰宅したかもいまいち覚えていなかった。
気が付いたら自室にいて驚いたぐらいだ。

テニス部にマネージャーとして入る…それに対する私に今の気持ちはなんなのだろうか?
少しの好奇心。
やってみたい、挑戦してみたいという気持ちが湧き上がる。

でも直ぐ様に無理だという言葉が私の中でその感情を飲み込んで行く。
『無理だ』という言葉が私を責め立てる。

家の事、自分の異性への対応のこと、テニスの知識。

あげればキリがなかった。
不安な事柄が多すぎて…そしてやっぱり自分自身に自信が持てなくて私は尻込みしてしまう。

「――!【名前】!?」
「え!?あ、はい!!」

私は驚いて悲鳴のような返事を上げてしまう。
驚いて振り返ればそこにはおばあちゃんが立っていた。

「なんやボーッとして」

おばあちゃんが笑いながらキッチンへと入ってくる。
私は自分が食器を洗いながらボーッとしてしまっていた事に気が付いて慌てて蛇口を捻った。
また昨日からテニス部の事を考えてしまっていてボーッとしてしまっていたのかと気付いて『しっかりしろ』と自身を叱責する。
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