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ゆるやかな速度で

第4章 3.再会


暫く白石くんをボーッと見ていると、何だかテニスコートの別の場所がざわざわと騒がしくなっている様で白石くんから視線を外して違う場所へと視線を向けると金太郎くんが別のコートに入っていた。
どうやら試合形式で練習をするみたいだ。
遠くからでも金太郎くんが「おおきに」と相手にお礼を言っているのが聞こえてくる。
もしかしたら、彼は試合形式で練習したいとせがんだのかもしれない。
私はあの金太郎くんがどんな試合をするのだろうか?とワクワクしながら彼を遠くから見守った。

「…凄い」

ただその言葉が無意識に口から漏れた。
金太郎くんはキラキラと目を輝かせながらテニスコート内を走り回る。
勿論相手の人も下手なわけではないのだろう。
それでも金太郎くんの試合内容があまりにめちゃくちゃで破天荒で楽しくて、テニスのルールが分からない私でも周りのギャラリーの反応からしてこれが凄い事なんだと理解出来た。

金太郎くんを見ていると、ふと先日の遥斗の事を思い出す。
キラキラと目を輝かせながらラケットを振る遥斗はとても楽しそうだった。
今の金太郎くんに比べれば規模が違いすぎるが、2人ともただただ純粋にテニスという競技を楽しんでいるのが見ている私にも伝わってくる。

無意識にコート近くのフェンスまで歩いてきていた私は目の前のフェンスにぶつかってしまう。
その衝撃で自分がコート近くまで歩いてきていたと気付かされる。
でもそんな事は気にならなかった。
それだけ今の私は彼の試合内容に魅了されていたのだった。

「【名前】ーー!!!」

そんな試合内容に魅入っていると、いつの間にか試合が終わったようで金太郎くんが私に向けて手を振りながら走ってきれくれる。
キラキラとした表情は変わらない。
それに先程まであれだけ動き回っていたのにまだまだ元気が有り余っている様だった。

「って、【名前】どないしたん!?お腹でも痛いんか!?」
「え?」

駆け寄ってきた金太郎くんの台詞に驚く。
でも私を見ている金太郎くんの表情の方に私は驚いてしまう。
何か私はしただろうか?と思っていると、スッと目の前に小さなハンカチが差し出される。
驚いて差し出されたハンカチの手元から視線をあげるとそこには見知らぬ眼鏡をかけた男の子が立っていた。
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