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ゆるやかな速度で

第4章 3.再会


テニス部に到着するまで私は何故か両腕を掴まれたまま連行されてくる様な状態となってしまっていたので大変だったが、彼らが部室で着替えるというのでそこで解放されて少しホッとした。
テニスコートのフェンスの周りにはチラホラと女の子達が見学しているのが目に入る。
テニス部の人たちって人気があるんだなと思いながら私も少し離れた位置から見てれば良いのかなと思い、近くの木の下に寄り添う様に立つ。
そこは木陰になっていたので、たまに吹いてくる風が心地よかった。

暫くそこからテニスコートを見つめる。
何人かの人たちがラケットを振ったりしてフォームを確認しているのや、打ち合いをしているのが分かる。
でも思ったより人数が少なかった。
テニス部はそれなりに人数がいると聞いたことがあるので、もしかしたらランニングとかで今はいない人達もいるのかな?と思いながら私はボーっとテニスコートを見つめていた。

「あ!白石先輩だ!」

近くにいた女の子達のざわめきが耳に入る。
いつもなら多分気に留めない声の大きさなのに自然と彼女たちの声に耳を傾けてしまう。

「かっこいいね」
「ねー。去年から部長だったとか本当凄いよね」

彼女たちが白石くんを褒めているのを耳にしながらコートに入ってきた白石くんを見る。
彼は何人かの人達にいつの間にか囲まれていた。
そして何か指示を出したのか白石くんの言葉を聞いて頷いて去っていく人がまた別の誰かに話しているのが分かる。

部長さんだから色々と指示する事もあって大変なのだろうということがそれだけで伝わってくる。
それなのに遥斗の為にわざわざ家まで来てくれて丁寧に…そして親切にしてくれた事で彼の人柄の良さも凄く良く分かる。
近くにいた女の子達もきっと白石くんのファンだったり、恋をしている子なのだろう。
今日もたくさんの人に彼のことを聞かれた事も納得する。
あんなにも素敵な人なら恋してしまう子たちがいるのも頷けてしまう。

「きゃー!かっこいい!!」

白石くんの事を考えていると近くにいる女の子達が白石くんがコートでボールを打ち返して点が決まったことに黄色い歓声を上げた様だ。
コートの中で爽やかに微笑んでいるのが目に入る。
そして直ぐにサーブのポジションへと戻り、綺麗なフォームでボールを打つ白石くんがいた。
その姿はとても格好良くて私には輝いて見えた。
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