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ゆるやかな速度で

第15章 13.距離


「す、すまん、ほんま。いや、緊張って2回もいう程、緊張してくれとるのに、頑張ってもらえると思うたら、なんか嬉しくなってしもうたのと、なんかツボに入ってもうて」

白石くんはそう言ってから深呼吸して笑いを止める。
私も変な緊張をしないように、彼を真似て深呼吸をして心を落ち着けた。

「じゃあ、タイミングがええ時からで大丈夫やから、よろしく」
「はい」

そう言って白石くんは私がなるべくやりやすいように、少しだけ距離を取ってユニフォームを私の方へ伸ばしてくれる。
私はそれを持って裏返して、なるべく早く終われるように、事前に準備をした針をもち、縫い始めたのだった。

緊張でどれぐらいの時間がかかったのかは分からない。
いつもより時間がかかった気がするけれど、何とかほつれていた部分の応急処置を施して私は針を針山に戻した。

「待たせちゃってごめんね。あと応急処置だから、家に帰ったらちゃんと縫いなおした方が良いと思う」
「そんなこと無いと思うけどな?でも、ほんまにありがとうな。助かったわ」

白石くんは私の縫った箇所を見てからそう言って嬉しそうに笑う。
いつもよりも白石くんと至近距離にいるので、彼の本当に感謝している気持ちがいつもよりも強く伝わってきて私は彼と目を合わせられなくなってしまう。

「あ、近かったよな?堪忍な」

私が俯いてしまったのみて白石くんはそう言い、距離を取ろうとするので、私は無意識に彼のユニフォームを掴んでしまう。
そのことに、白石くんも私自身も驚いて、2人とも無言で少しの間が出来る。
私は少しして我に返り、慌てて彼のユニフォームから手を放し謝罪する。

「ご、ごめんなさい!その…近いのが嫌とかじゃなくて…こんなにも近くて驚いたけど…白石くんは何故か嫌じゃないの…それが不思議で…。あと無意識にユニフォームを掴んじゃったみたいで、ごめんなさい」
「ユニフォームは大丈夫やから気にせんで、ええよ?ほら、伸びるし」

私が少しでも気にしないように白石くんがそう言ってユニフォームの掴んで私の方へと少し伸ばしてくれる。
少しだけ伸縮する素材のようだ。
私のせいで更にほつれたり、破けたりしなくて安心した。
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