第3章 2.不思議な人
私はそんな事、言わなくても良いのにと少しだけ遥斗へ視線を向けると、ごめんと謝罪される。
でもそれは心から申し訳なさそうに謝っているわけではない事が分かるぐらいには私は遥斗の姉として過ごしてきていた。
それでも可愛い弟の謝罪の言葉に私は甘いと分かっていても直ぐに許してしまう。
そんな私たちのやり取りを白石くんは微笑ましそうに見ていてくれていた。
私たちの間に和やかな空気が流れていたが、ふとそこで私は我に返る。
いつまでも白石くんを玄関に立たせっぱなしにしていたことをだ。
慌てて謝罪して家にあがってもらう様に促す。
白石くんの荷物を置きに居間へ向けて案内する為に3人で歩き出す。
私は案内するために先頭を歩いていたが、後ろから2人が楽しそうに会話しているのが背中から聞こえてくる。
多分、足音からして遥斗は白石くんの横でちょこまかと動き回りながら会話しているのだろう。
姿は見えないが、その姿が容易に分かってしまい私は声には出さず笑ってしまう。
こんな風に楽しそうにしている遥斗の姿に私も嬉しくなって、案内する足取りはとても軽やかだった。
***
居間についてからは早かった。
どうやら痺れを切らした遥斗は白石くんを凄く急かして庭へと飛び出していった。
「ごめんなさい」と私が居間から連れ去られようとしている白石くんの背中越しに謝罪をすると、私の謝罪の意味を瞬時に理解した白石くんは「大丈夫やで」と一声かけてから遥斗と一緒に庭へと降りていった。