第13章 11.視線
「はぁ……ほんまかなわんわ。暑すぎやない?」
「小春!これ冷えたスポドリやで!」
「ユウくん、ええん?」
「当たり前や!小春の為に用意したんやから!」
今日は黙々とコート周りに生えてきている雑草抜きの仕事をしていると近くで小春くんとユウジくんが会話しているようで、ふとそんな会話が聞こえてくる。
言われてみれば今日は夏日だと朝の天気予報で言われていた通りになっていると、ジワリと自身の背中を伝う汗でその事に気が付いた。
熱中して雑草を黙々と抜いていたので、あまり水分を取っていなかったかもしれないと私は立ち上がろうとして、少しよろけてしまう。
「危な!」
けれど、私が倒れる事はなく、誰かに後ろから支えられる。
私はお礼を言おうと顔だけ後ろを少し向くとそこには白石くんがいた。
「白石くん…。急に立ったから立ち眩みしちゃったみたいで…。ありがとう」
「ええって。倒れたりしなくて良かったわ。それとこれ」
そう言うや否や白石くんが私の頭に何かを乗せる。
「……麦わら帽子?」
「せや。部室にあった帽子これぐらいやったからな。今日めっちゃ暑いやろ?これ被って作業して欲しいねん。なるべく直射日光避けてな」
「ありがとう。部室にあったの気付かなかったから…私」
「なんや知らんけど、この帽子めっちゃ変なとこに置かれてたし、大掃除せんと気付かへんよ。だから気にせん様にな?俺が見つけたのもほんま偶然なんよ」
そう言って笑う白石くんは、いつも私が気にしないように優しい言葉をかけてくれるんだなと思った。
彼の言葉の1つ1つが優しくて、じんわりと胸を温かくしてくれる…と思っていた時だった。