第11章 9.合宿03
白石くんの背中におぶられてユラユラと心地の良い振動が、疲れた私に睡魔として襲いかかる。
大きくて優しい背中はとても心地が良くて、夢の世界へと誘われてしまう。
遠い昔にも似たような気持ちを抱いた様な気がして私はそれがいつの頃だったのか思い出そうと記憶を遠い遠い昔へと遡っていく。
その行為が今の私にたいして更に睡魔へと誘われる行為となったのは言うまでもなかったのだった――。
***
「ごめんね…ごめんね」
「大丈夫だから、そんなに泣くなよ、【名前】」
泣きじゃくる私を背に乗せてヨロヨロと歩く少年の背に揺られる私がいた。
私の名を呼ぶ彼は泣いている私をどうして良いのか分からないようで困り果てた声音で私を辿々しい口調で慰めてくれていた。
そんな光景を私は夢に見ていた。
夢だと認識した今の私は、過去の映像を自身の記憶から光景を捏造して今ドラマの様に再生されているのを見ている観客の様な存在だった。
正直こんなにも鮮明な夢を見ることなんてあるのだろうか?と思わなくもないのだけれど、見てしまっているのでどうしようもない。
きっと白石くんの背中がこの日の彼と似ていたから思い出してしまったのだろう。