第10章 8.合宿02
「一応オサムちゃんと事前確認しとるから大丈夫やとは思うけど森にはかわりないからな。足元気をつけてな」
「ありがとう」
こういった気遣いが出来て全体を見ることが出来る白石くんが素敵だと思った。
この言葉がきっかけで私の先程までのおかしな緊張が抜けていき何時も通りに戻ることが出来たのだと思う。
そして私達は2人で小道を歩きながら色々な話をしていく。
最近の遥斗の様子や、それに白石くんの家の事を教えてもらった。
白石くんのお姉さんや妹さんとの関係のお話しを聞いたり、それと他にも学校生活の話でも盛り上がることが出来た。
彼の話で今まで知らなかった白石くんの一面や様々なことを知れて、ただただ純粋に嬉しいと私は思った。
何故こんな風に彼の事を知っていく度に嬉しくなってしまうのだろうかと考え込んだ時だった。
ガサガサと葉の揺れる音が微かに聞こえてきたのは。
私がふと足を止めて音のした方へと視線を泳がすと、白石くんは私が立ち止まっていることに気が付いたのか私の隣へと戻ってきてくれる。
「どないした?」
「何か…音がしたような?」
私の言葉を聞いて白石くんも目を閉じて耳をすませる。
私も再度ジッと先ほどの音を待つように静かに耳をすませているとやはりガサガサと葉が擦れる様な音がした。
その瞬間に最初に白石くんが注意していた言葉を思い出す。
サッと血の気が引いていく私はどうしようと狼狽えた瞬間だった。
「【名前】…俺の後ろに」
白石くんが私を庇うように音のする方へと前に出る。
彼の行動が早すぎて私はされるがままになってしまい戸惑ってしまう。
本当なら白石くんより私の方が彼を庇うべきなのではないだろうか?
だって彼はこれから大会に出る選手なのだから。
私が多少の怪我を負うことはそこまで支障はないけれど白石くんが怪我をしてしまうのはきっと大変な事になってしまう。
そう思うと私は自然と体が前に出ようと動いていた。
けれど白石くんの前に出ることは叶わなかった。