第1章 さよなら恋よ
「……。御機嫌よう。モモノ・ホワイトラントと申します。先日引っ越して来たばかりなのですが、殿下や…」
ちらりと彼女は彼を見た。アイコンタクトを取る、そして彼は叫んだ。
「ユースでいいぞ。モモノ」
「……!!」
「これは…」
「……審議。」
これは、と言ったのはラード。審議はエバ。その前は私。ラードは何故か私の傍に居てくれた。多分境遇が理解出来たのだろう。
「ゆ、…ユースや、マリア様、メイドさん達、大臣の方々、ユースの御両親に様々なことを教えられ」
「御教授頂いて、」
癖で口調を正してしまう。
「ご、御教授頂いて、とても有難く思っています。」
精一杯、頑張ってます、という演技をしても無駄。私は知ってるから。ここは選択、間違えると可愛らしさが上がり、ユースの攻略への決定打になる。
「……モモノ様、有難う御座いました。殿下から一言。お願いします…」
声が虚ろになってしまう。
ラードからの「頑張れ、背筋伸ばせ、しゃんとしろ」
その三言で、マリア・レッドローズとしての自覚ができる。
「……皆、今日は集まってくれて感謝する。来年には俺も結婚できる歳だ。だが、……マリア。」
……いや、今日は違う。多分
「俺は君との結婚を見直させてほしい。」
待て。政略結婚。OK?
恋愛でどうこうできる問題じゃないの。
大丈夫かしらこの殿下。
「…分かっていましたわ。ですが、…いえ、これは結果が決まってから聞けばいいことですわね。」
理由なんて来年聞けばいいのだから、別に。と思い、後回しにすれば。
説教をはじめる。
「……殿下。私はそれでも構いません。が、御両親にきちんと御相談はされましたか?御両親の口が開いて塞がってないですわよ。」
お騒がせしまして申し訳ございません、と彼の両親、つまり王、王妃様にきちんと頭を下げれば。
「そしてモモノ様。私は貴方に言う筋合いはないでしょうけど、ひとつだけ言わせて下さいまし。………」
調子乗んなよ。といいたいが、こんなことを言ったら品行に関わってしまう。ので。
「……次元が違うのです、私と殿下は。」
正確にいえば、私達。だが。