第7章 ~奪還、そして想い~
大名の手から助け出されても尚、混乱と恐怖に震えるの身体を 安心させるように優しく抱き締め、頭を撫でてくれる固くて大きな掌ーーー
ゆっくりと顔をあげ振り返ると、
そこに居たのは漆黒の闇の中、いつの間にか雨が上がり、雲間から顔を出した月明かりに照らされ、深紅の瞳を湛えた信長だった。
「信長…様…?」
信長「貴様の帰る場所は此処だ。ゆめゆめ忘れるな」
を立たせ、自分の方へ体ごと向かい合わせ、それだけ言うと
信長は固い掌での頬をそっと包み込み、
何も言わず、その瞳からぽろぽろと零れ落ちる涙を優しく微笑みながらそっと親指で拭っていく。
「っっ…信長様ぁ!!」
その優しい眼差しと仕草に堪えきれないというように、は くしゃっと顔を歪め、その胸に抱きつくと、
信長もまた、優しく力を込めその小さな体を抱き締め返す。
(助けに来てくれたんだ…)
「ありがとう…ございます………」
規則的に打つ信長の鼓動で
漸く落ち着きが戻り助けに来てくれたのだと理解するとその一言を呟いたと同時に全身の力が一気に抜け、
その体を広く逞しい胸に預けるようにそのまま意識を飛ばした。
信長に追い付いてきた他の武将達も静かにその光景をみて安堵の溜め息をついたのだった。