第1章 事の始まり
「あー…降ってきちゃった…」
仕立て終えた着物を届けに城下を訪れ、
全て渡し終えると馴染みの反物屋で新しい反物を買い、
城へ戻るため店の外へ出ると
先程までの快晴だったのが嘘のように、
空はどんよりと黒い雲で覆われ、
ポツポツと雨が降り始めた。
「傘なんて持ってきてないし、ひどくなる前に急いで帰ろう!」
(びしょ濡れで帰るとみんなに迷惑かけちゃう。それだけは避けなきゃ!)
まだ、タイムスリップしてきて間もないは素性を明かすために500年後の世から飛ばされてきたと安土城の武将達に告げてはいるが、
未だにどの武将とも打ち解けておらず、
信長にお願いして今は針子として働きながら
安土城に置いてもらっている。
反物が濡れないように抱え、足早に城へと続く道を進んでいく。