ロリコン王子(絶倫)をドMに覚醒させようとする悪役令嬢の話
第4章 王子の初恋は必ず実る4
一方その頃、レオンハルトは空に浮かぶ馬車に揺られていた。うっとりとクリスティーナの事について長々と話す王子に、苛立ちを募らせる美青少年の騎士はこれでもかと言うくらいにドン引きしつつ、距離を取りたそう王子の前に腰掛けている。彼の名はヴィッツ。レオンハルトの右腕であり若くして団長に上り詰めた天才剣士だ。ちなみに二人は昔からの幼馴染みである。
「可愛い、本当に可愛いんだクリスティーナが…」
「……やめろ、気持ち悪い。クリスティーナ令嬢が可愛いのは分かった、いい加減鬱陶しい」
「盗るなよ、譲る気は更々ないがな」
「盗るか、犯罪だぞ…後お前の性癖がクリスティーナ令嬢をピンポイントにつくのが可哀想でならない」
「クリスティーナに踏まれて嘲笑う彼女の姿が見たい」
「話しを聞け、ド変態王子」
「お前には言われたくないな、ドS騎士殿?」
獲物を仕留める野獣の如く、ニタリと微笑んだ王子にヴィッツは表情を引き攣らせて口を閉ざした。ドSはどちらだ。逃がす気は全くないと言うのに今だけ泳がせる真似をして…そうヴィッツは同情するようにクリスティーナを思い出して大きくため息をついた。
レオンハルトは思い出す。つい先日の事だ。アイリーン家とは昔から親しく良き同盟家関係を結んでいる。一回り年の離れたご令嬢に会って頂きたいと言う理由もあって、忙しい仕事の気晴らしになればと彼女に会いに来た。遠くからアイリーン公爵に手を引かれて彼女はやって来る。小さく可憐な少女、可愛らしいとは思った。でも別に性的な目で見るつもりは今のレオンハルトはなかったのだ。とてとて…と緊張しているのが手に取るように分かる。もじもじと恥ずかしそうに身体をくねらせて真っ白な頬を赤くしていたクリスティーナを見た時、これは挨拶を終えたら緊張を解してあげないと…兄が妹を想うような気持ちになり愛でたい。そう思った。そしてクリスティーナは恥じらう乙女の姿でドレスを持ち深々と頭を垂れる。