第19章 掴めないヤツ
俺の言った地獄、に
二ノはあはは、と笑った。
「…まあ、それがそうでもなくて。
実は私、そばに居られれば
肩書きなんてどうでもいいみたいな
人間なんで気長にやってこれました。」
「へぇ……、でも最近、何が違う、と?」
俺の、言葉に二ノがニヤリと笑った。
「…んふふ、そうなんです。
さすが翔さん、飲み込みが早い。
最近、焦ってるみたいなんです、私。」
まるで第三者の話をしている様に
自分のことを話す二ノ。
二ノは俺たちの中で誰よりも冷静で
常に一歩引いて全体を見る人間だ。
だから自分のことも第三者の感覚で見るんだろう。
「もう止まんないんじゃない?
6年間の想いは。」
「やだな、やめてくださいよ。
六年間の想いはそんなバカじゃありませんよ、
翔さん。
ゆっくりじわじわと
時間かけて虐めてあげるんです。
なあんて、嘘でーす。」
そう言って鼻に指を突っ込みふざけた顔をした。
「…!?へ!?何が!?何が嘘!?」
慌てて二ノを問い詰める。
「あはははは、教えません!」
無邪気な顔して立ち上がる二ノ。
「ちょ、二宮君!
先輩に向かってその態度は何ですか!」
「んふふ、
あ、そうだ先輩、メシでも行きます?
もちろん、先輩の奢りで!」
「そうゆう時だけ先輩言うな!」
これだから二ノは掴めない。