第9章 嫌な予感
「おはよう、二ノ。」
月曜日。また一週間が始まる。
「あ、櫻井さん。はざ-す。」
翔ちゃん相手でも会社では基本敬語。
いや、上司だから当たり前か。
「何それ。新しい挨拶?」
「はい、親しい人用です。」
「じゃあ、仕方ないなあ、他の先輩にはNGよ。」
「あーい。」
翔さんからは注意されても素直に入ってくる。
性格ひん曲がった僕でも。
さすが、リーダー。
「うん、よろしい。」
そうして恥ずびれもせずウインクとかして
去っていっちゃうんだから。
やっぱ翔さんはかっけえなあ。
いろんな意味で。
朝礼も終わり打ち合わせに行く準備をする。
あ、やべ。企画書のファイル忘れた。
作り直すか!?いや、間に合わん。
企画自体は頭にビシッと入ってるから…
箇条書きでもしてプレゼンでなんとか…
「二宮先輩。」
「…ふ、え!?」
かなりの一大事で焦ってたせいで
ビックリして変な声が漏れた。
「…何ですか、その反応。」
「…主人公名前…、ビックリさせんな!」
今日の外回りは主人公名前と二人。
つかまあ、大体こいつ。外面がいいコンビ。
「いります?これ。」
そう言って見せられたものは
一枚のフロッピーディスク。
「え!?」
「その焦った感じは
企画書のファイル忘れたのかなあと思って。」
な、ナイス!
主人公名前には何度も仕事で助けられた。
いつもめんどくさがって何にもしねぇくせに
仕事になるとかなり気がきく。
「やっぱ、俺、主人公名前居ないと無理…かも。」
まあ、いろんな意味で。
「ふふ、朝からいちいち大袈裟ですね。」
「いや、本気なんすけど。」
主人公名前の顔がちょっとビックリする。
あれ?今ドキッとした?
んふふ、わっかりやす~い。
「…ねぇ、今ドキッと…」
「してません。」
ちぇ。