第7章 誰かと比べて
「…今日さ、デート行ったわけ」
はい、知ってますとも。
「…映画行って、飯食って、
めっちゃ定番デートなやつ」
はい。インドアな先輩が珍しいっすね。
「楽しかったはずなのにね。
疲れたんすよね、私」
先輩の声が弱い。
「…たぶん、安西さんが
普段見慣れない美人だからですよ」
先輩がちらっと私を見る。
「ふっ、…そおね」
おいコラ、比べんなや
「ここに来る前、安西さんに
付き合えませんって断った」
ビックリする内容に思わずボロボロの顔を先輩の方へ向ける。
「…え?なんでです?」
「んー…そおね、
自分が自分じゃいられなかった
っていうのが一番の理由でしょうな。」
「でもそれはまだ…」
お互いを知るには早すぎやしませんか、先輩。
「…そうも考えたんだけどね、たぶん時間じゃないのかなって。
自分が出せる相手か出せない相手かなんて、出逢った一秒でわかるもんだなって、主人公名前達のとこに来たらすぐわかった」
真っ直ぐ壁を見ていた先輩が私の方を向く。
「…たぶん、安西さんと付き合っても
貴方達を優先するんでしょうね」
「……」
なんだろう。
なんて言えばいいか、わからなかった。