第2章 罠
守れなかった。
信也の中でそれは許せないことであり、あってはならない事だ。
主を守り仕えるのが執事。
確かに奏は救えただろう。
だが、癒えない傷を与えた。
この先奏は一生忘れない。
そんな傷を与えた。
謝っても許され物ではない。
「葛城、お願いがあるの」
「何でしょうか?」
ゆっくりと顔をあげ、信也を見据える。
そこにある執事の仮面に手をかけた。
そして、ゆっくり、外す――
「信也に、お願いがあるの。葛城は下がりなさい」
一瞬驚いたような顔がそこにあった。
そして、強く強く抱きしめられる。
「信也……あのね」
自分自身もお嬢様と言う仮面を外す。
今からはただのゲーム好きの女子高生。
あるがままの飾らない――私。
慣れない敬語も、繕った無表情も無い。
ただ、普通の、葛城信也という一人の男に恋をした一人の女になる。