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【短編集】ブーゲンビリア【R18】

第2章 罠


守れなかった。
信也の中でそれは許せないことであり、あってはならない事だ。
主を守り仕えるのが執事。
確かに奏は救えただろう。
だが、癒えない傷を与えた。
この先奏は一生忘れない。
そんな傷を与えた。
謝っても許され物ではない。

「葛城、お願いがあるの」
「何でしょうか?」

ゆっくりと顔をあげ、信也を見据える。
そこにある執事の仮面に手をかけた。

そして、ゆっくり、外す――

「信也に、お願いがあるの。葛城は下がりなさい」

一瞬驚いたような顔がそこにあった。
そして、強く強く抱きしめられる。

「信也……あのね」

自分自身もお嬢様と言う仮面を外す。
今からはただのゲーム好きの女子高生。
あるがままの飾らない――私。
慣れない敬語も、繕った無表情も無い。


ただ、普通の、葛城信也という一人の男に恋をした一人の女になる。
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