第2章 罠
あれから何事も無かったように時が過ぎる事1ヵ月。
執事の顔を見る度に目を逸らしてしまう日々が続いている。
父親に言えばすぐ解雇になるであろうが、何故か奏は言わないでいた。
理由は彼女にも分からない。
執事もそれが分かっているのか、態度等は全く変えずに接してくれている。
ただ、1つの事を除いて……。
名前で呼ぶことだけを強制されていた。
苗字で呼ぶとすごい真っ黒な笑みを浮かべて訂正されるのだ。
「犯すぞ」と顔に書いてあるあの笑み。
1ヵ月も経てば自然と身についてきたため、今ではすっかり名前だ。
そんな中、奏は会社に居た。
何故かと言うと、ゲーム開発が遅れているので手伝ってやってくれ、と父に言われたのである。
奏は大手ゲーム会社社長の娘。
時々ではあるが、そういう事もやるのだ。
しかし、手伝うのはいいが……。
「未成年である私に大人向けの物を手伝わせるのは駄目でしょうに……」
溜息をつきながらプログラムを淡々と作っていく。
専門的な知識は既に頭に入れてあった。
ゲームを作る事は嫌いではない。
むしろ好きな方だ。
シナリオ、構成、演出、プログラム、企画立案。
それらをこなす為に小学から専門家に家庭教師をしてもらった。
デザインも当然習ってはいたのだが、絵心は残念ながら皆無だったため、諦めたのだ。
さすがに才色兼備とはいかなかった。
現在作っているのは、R18の男性向けゲーム。
プログラムは今やっている工程で一段落だ。