第10章 雨上がり
「欲しい? 欲しいよね? 先輩。こんなに、ヒクつかせてるんだもん。欲しかったら、俺の彼女になってよ。引っ越すのが面倒なら、先輩の家で、同棲させてよ。全部、俺に塗り替えてやるから。全部、上書きするから。悪くないでしょ? もっと、気持ちよくなれるし、寂しくもないよ? 俺が、傍にいる。ね? 俺と結婚を前提に、付き合ってください」
こんな時に言うなんて、ずるい。答えなんか、分かりきってる癖に。聞かないで。
「ずるいよ……」
「知ってる。でも、この一週間、先輩が酷い顔してるの、もう、見たくない。俺なら、泣かせないっ!」
「葛城君……」
「名前で呼んでよ奏。俺も、名前で呼ぶから。奏が嫌なら、ちゃんと会社では、先輩って呼ぶから。二人のときは、名前で呼ばせて。名前で呼んで」
「うん……信也……」
「なあに? 奏」
「中に……きて……信也が……ほしい」
腕を伸ばしながら、信也を求めた。信也が厭らしい笑みを浮かべ、一気に中へと肉を突き刺した。奥まで入ると、一度動きを止め、余韻に浸る。奏の腕が背中へと回され、二人で抱き合う。
我慢してきた男と寂しかった女。
感情を分け合うように、抱きしめあう。無意識に中が締め付け、苦悶の声が漏れた。我慢できずに、腰を揺らす。擦れる度に嬌声が上がる。何度も何度も奥を突き上げ、何度も何度も挿入を繰り返す。我慢してきた分、全てを伝えるために。自分の体を覚えてもらうために。
「あっあっ……イクっ……イッちゃうう」
「いいよ、俺も、イクよ。一緒にイこう?」
「んっ! うんっ! い、いっしょに、イクゥ」
「っ!」
欲がゴムの中へと吐き出され、二人はそのまま抱き合いながら、ベッドへと沈んだ。
余韻に浸っている最中、限界を迎えたのか、奏の寝息が聞こえてくる。優しく頭を撫で、後処理をすると、布団を優しくかけ、電気を消した。
起きたら、何をしようか。そんな事を思いながら眠りについた。もう、離しはしない。
~Fin~