第16章 あざみ味
殺気に満ちたその声のする方へ急いで振り向くと、
目と鼻の先に末吉くんが立っていた。
佐藤
「あっ……の………」
末吉
「旦那に捨てられるってのはどんな気持ちワン?」
ニヤニヤしながら、
私の涙で濡れた頬に触れてくる。
佐藤
「……ごめん末吉くん……わたし…
拓巳くん……拓巳くんに………」
拓巳くんならきっと慰めてくれるはず…
私は末吉くんの手を払うと木戸に寄りかかりながら立ち上がった。
末吉
「…兄貴なら"あそこに居るぜ?"」
末吉くんは、
すぐ側の木の下を指差した。
佐藤
「…拓巳くん!」
私は直ぐにそっちを見ると…
拓巳
「…U-_-U…」
私の問いかけに気付いているのに"シカト"している拓巳くんが居た。
末吉
「兄貴はさ、なんで自分ばっかりこんなに汚い"犬小屋"に居るんだ?ってやっと気づいちまってよォ…」
佐藤
「!!」
末吉くんが私の肩に手を回す。
末吉
「しかもよく聞きゃ…
奥様の為に食料取りに行って"酷い目に遭った"って言うじゃないですか…
それなのに…人間以下の扱い………
奥様は暖かい布団の中で…兄貴は冷たい粗末な板張りの上…」
佐藤
「!!」