第2章 蒼緋之紫陽花
「昨日、悪かったな」
「仕方ないよ、お仕事だもん」
「詫びに、これ作ってきた。食うか?」
「わ!リンゴ飴!」
御殿に着いて政宗が差し出したのは、小さな紅いリンゴ飴。ツヤツヤした輝きは、宝石のようだった。
「ヒメリンゴだから、中はあまり甘くないが、これなら腹も膨れないだろ?」
「うん、ありがと!」
リンゴ飴を一舐めすると、ツルツルした表面から甘さが溢れ出す。政宗はずっと、そばで団扇を扇いでいてくれた。
「それ食ったら、川に行くぞ」
「かわに?」
「この時期、蛍が飛ぶんだ。綺麗だからな。お前と見たかった」
「..!うんっ!」
(蛍って、初めて見るなぁ。なんかワクワクしてきた!)
「お前、ホントに分かりやすいな」
「え?」
「楽しみで仕方ないって顔してる」
「んふふ、だってそうだもん」
まさか秀吉が項垂れているとは露知らず、と政宗は、まだ暑ぼったい夏の夜を満喫した。
完