第5章 ボクはキミを
ゼロアリーナの総支配人が見に来たIDORiSH7のLIVE――そこで陸は体調を崩し、アンコールに出ることができなかった。
少し不安は残ったようだが、一織のフォローもあってこけら落としの中日は無事IDORiSH7に決定。
そしてマネージャーの提案で、一時的にセンターを一織に変更することに。けれど、陸の調子は一向に戻らなかった。
* * *
陸のことを心配に思いながら、零が収録を終え携帯を見てみれば、天から着信が入っていた。
あの事件以来、天とはなんだかんだ毎日他愛もないラビチャを繰り返していたが、電話がかかってくるのは初めてだ。
『天から電話なんて珍しい……何かあったのかな』
独り言をつぶやきながら、零は天に電話をかける。prr...とコールが鳴れば、すぐに懐かしい声が聞こえてきた。
≪もしもし≫
『電話でれなくてごめんね、今収録終わったよ!急に電話なんて、どうしたの?』
≪……用がなくちゃ掛けちゃいけない?≫
『え、いや。そんなことないし、嬉しいよ』
≪……そう≫
天のそっけない反応に、しばしの沈黙が流れる。先に沈黙を破ったのは、天だった。
≪今日、これから寮に帰るの?≫
『うん、帰るよ。なんで?』
≪じゃあ、少し寄らせてもらう。陸にも言いたいことがあるし≫
『え、本当に?陸、喜ぶよ!』
≪……どうかな。お土産、何がいい?≫
『喜ぶに決まってるでしょ。あ、王様プリンがいい!!環くんが王様プリン大好きだから!』
≪わかった。じゃあ王様プリン買っていく≫
『やった!ありがとう!』
≪うん。……あとで会えるの楽しみにしてる≫
零が『私も』と言おうとした瞬間、プツッと電話は切られてしまった。
『あれ、切れてる……』
電話を切られてしまったスマホを見つめていれば、コンコン、とノック音がした後に扉が開いた。