第19章 夜明けの譚詩曲
それから、忙しなく日々が過ぎた。
壮五の助けもあって、FSCホールでのコンサートを成功させたTRIGGER。その甲斐あって、MOPでTRIGGERの新曲が14位に上昇した。
相変わらずメディアではTRIGGERの話が尽くカットされてしまっていた。けれど、IDORiSH7、Re:vale、零たちは負けじと自分たちの出る番組でTRIGGERが活動していることをさりげなくアピールし続けた。
TRIGGERが活動していることを世間に知らせる極め付けになったのは、Re:valeの粋な提案だった。
生放送の音楽番組で、新曲である太陽のEsperanzaを披露する際、バックダンサーをTRIGGERに提案し、サプライズで出演させたのだ。これにはさすがのツクモの手も及ばず、こうしてTRIGGERが活動していることを、全国に知れ渡らせることができたのだった。
そして、フレンズデイを目前に控えた、とある日――。
フレンズデイの出演者やスタッフたちでの会議を終え、IDORiSH7とRe:valeと零の10人は、千の家に集められていた。
「それじゃあ、裏ミーティングを始めよう」
「裏ミーティング…?」
「うわあ!千さんのお家、初めてきた!」
綺麗に整理整頓された広い千の部屋に感動するi7のメンバーたち。
そんななか、気付いたように環が口を開いた。
「なんで、ももりんの部屋じゃねえの?」
「……うち、散らかってるからさー!」
百はそう答えてから、ちらり、と零を見やる。そんな視線には気づかずに、彼女は楽しそうに千やIDORiSH7のメンバーたちと話している。
「……誰かさんが、来てくれなくなっちゃったおかげで」
ぼそり、と寂しそうに呟いた独り言は、もちろん彼女の耳にも、誰の耳にも届くわけもなく。
一織が顔を顰めながら、百に向かって言った。
「あれからまた散らかったんですか!?」
「あはは、まあね!」
そんな他愛ない会話をしばらく交わしてから、百がかしこまったように口を開いた。