第18章 奏でるモノクローム
―――残酷な人だ。
ボクの想いも知らないで、ずっと側にいるだなんて。
キミへの想いが叶うことはないけれど。
でも、やっぱりボクには
キミの側を離れることも、できそうにない。
「……ボクの方こそ、離れてなんかあげないよ」
エレベーターに乗り込む零の背中にそう言えば、彼女は驚いたように振り返った。
『…うんっ!ずっと一緒だよ、天』
「……うん。約束」
小指を突きだす彼女の小さな手をゆっくり解いて、ぎゅっと手指を絡めた。
零は一瞬驚いたように目を見開いたけれど、すぐに微笑んで手を握り返してくれた。
『約束』
エレベーターの扉が閉まって行く。
そっと手を離せば、零は笑顔で手を振った。
扉が閉まって、彼女の姿がゆっくりと見えなくなっていく。
――どうか、狡いボクを許して。本当の気持ちに蓋をしてでも、キミの側に居れるこの場所だけは、何にも譲れないみたい。
ねえ、本当はこんなに泣き虫な事も
こんなに割り切れていないことも
キミだけはどうか知らないでいて。
キミの側で、キミを一番、応援してあげるから。
キミが泣いている時は、抱き締めてあげるから。
辛い時は、背中を押してあげるから。
キミと、キミの好きな人の歩いていく道を、後ろから照らしてあげるから。
キミの幸せを、一番近くで、見届けてあげるから。
だから。
キミにさよならを言われるまでは、側にいさせて。
きっと。それも―――幼馴染の特権、だよね?