第18章 奏でるモノクローム
「送ってあげられなくてごめんね」
龍と楽に別れを告げ、エレベーターのところまで送ってくれた天が言った。
『ううん。こんなときにまた撮られたら大変だもん。お互い様だよ!気にしないで』
「……。…零」
『うん?』
「今日は来てくれてありがとう。ドーナツも。…すごく嬉しかった」
真面目な顔をして言うものだから、なんだか照れくさくなって、零は赤らむ顔をごまかすようにして顔を逸らしてからエレベーターのボタンを押した。
『…これくらい、お安い御用だよっ!』
「……あれから百さんとはどうなの?うまくいってる?」
『え……っ』
明らかに動揺する零を見ながら、天は仕方なさそうに笑った。
「わかりやすいね、本当。その様子だと、何も言えてないんでしょう」
『……うん…。でも、今日は、普通に話してくれたよ!』
「普通に話してくれたって……今までそんなに気まずかったの?」
『少し、ね…。でも、ごはん誘ってくれた!だから、その時にちゃんと言おう…とは思ってるけど』
「……そう。よかったね」
『うん!天が勇気をくれたおかげだよ!』
嬉しそうに話す零を見ながら、天はふっと微笑む。しばらく間を置いてから、静かに口を開いた。
「……百さんのこと、好き?」
『え!?……それ、この前言ったでしょっ』
――頬を赤らめながら、おどおどするキミ。
どうしようもなく可愛くて、どうしようもなく妬ましい。
「で、好きなの?」
『……なんで言わせようとするの…!天の意地悪…』
「ボクが意地悪なのなんて、今に始まったことじゃないでしょう」
『そうだけど……』
もじもじと口を噤む零を見ていれば、エレベーターの音が鳴った。
「ほら、エレベーター来ちゃったよ」