第17章 雨と月と輪舞曲を
『……うっ……』
「……全く」
聞き慣れた声とともに、惜しみなく振り続いていた雨が、ぱっと止んだかのように思えた。見上げてみれば、息を切らした万理が傘をさしてくれていて。
『……っ、万理さ…っ』
「傘もささずに飛び出して、やっと見つけたかと思えば、泣いてるし……」
万理は仕方なさそうな顔でため息をついてから、すらりと長く細い指で零の頬を垂れる涙をそっと拭った。それなのに、瞳から零れる涙は止まらなかった。
『…ごめんなさいっ……嬉しくて……っ』
「……いいよ。泣きたいだけ泣きなさい」
ぽんぽん、と背を撫でながら抱き寄せてくれる優しい手のひらが、更に涙腺を刺激するようだった。
涙が引いた頃には、雨はいつの間にかあがっていて。
洗い清められたように澄みとおった夜空のなか、微かにだけれど確かに輝いている月はまるで、彼らのようだった。