• テキストサイズ

スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第17章 雨と月と輪舞曲を




『……うっ……』

「……全く」


聞き慣れた声とともに、惜しみなく振り続いていた雨が、ぱっと止んだかのように思えた。見上げてみれば、息を切らした万理が傘をさしてくれていて。


『……っ、万理さ…っ』

「傘もささずに飛び出して、やっと見つけたかと思えば、泣いてるし……」


万理は仕方なさそうな顔でため息をついてから、すらりと長く細い指で零の頬を垂れる涙をそっと拭った。それなのに、瞳から零れる涙は止まらなかった。


『…ごめんなさいっ……嬉しくて……っ』

「……いいよ。泣きたいだけ泣きなさい」


ぽんぽん、と背を撫でながら抱き寄せてくれる優しい手のひらが、更に涙腺を刺激するようだった。


涙が引いた頃には、雨はいつの間にかあがっていて。


洗い清められたように澄みとおった夜空のなか、微かにだけれど確かに輝いている月はまるで、彼らのようだった。



/ 552ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp