第17章 雨と月と輪舞曲を
十月の空は高く青く広がっていて、秋の深まりを感じさせる冷たい空気が、肌に心地よい。
そんな秋晴れの朝、テレビ局の廊下を、零はいつものように万理の隣を歩いていた。
外は爽やかな秋晴れだというのに、零の顔はなぜか、恐怖に怯えていた。
「……零ちゃん」
『……はっはいッ!?ご、ごめんなさい…!!』
名前を呼んだだけだというのに、零は怯えるように何度も頭を下げて謝っている。そんな彼女の姿に、万理ははあ、とため息をついた。
「どうして謝るの?」
『…だ、だって……っ』
先日、TRIGGERを助けるためとはいえ、危険なことに首を突っ込んだ零とRe:valeの二人は万理にこっぴどく叱られたのだ。その時の万理があまりに怖かったようで、それ以来この調子だった。
『……本当に…この前はごめんなさい……』
「……。もう、ちゃんとわかったんだよね?」
『もももちろんです…!もう二度と…万理さんに黙って危険なことは――』
「大丈夫。もう零ちゃんの側を一時も離れずに、しっかり俺が監視してるから。二度とそんなことにはならないよ」
零の言葉を遮った万理が、にっこり笑った。
その笑顔は、怒った顔なんかより数百倍効果的だったようだ。零は震えあがりながら何度も首を縦に振り続けている。
そんな零を見ながら、万理は困ったように笑いながら口を開いた。
「…はは、冗談だよ。…でも、何かあってからじゃ遅いんだ。あの日、いくら紡さんがついていてくれたからといって、どうしてついていかなかったんだろうって、どうしようもなく自分を悔やんだよ。…俺は零ちゃんのマネージャーだよね?デビューする前から、ずっと側にいた。それなのに、相談の一つだってしてくれない。……俺って、そんなに頼りない?」
万理の言葉に、零はきょとん、としてから、今度は全力で首を横に振った。