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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第16章 アダムとイヴの林檎




様々な音が混じり合った都会特有の喧噪が、低く渦を巻いている。


天は一人、そんな街の中にいた。


「………」


沈んだ気持ちを体現するかのように下を向いて歩いていれば、ふと後ろから声が掛かる。


「――おい!」


振り返ってみれば、そこにいたのは――あの日、天の家の前で捨て台詞を吐き捨てた少年だった。


「……キミは……」


先日、九条が帰国した際、彼の事を話した時に言われた言葉を思い出す。

――”「亥清悠。天と同じ時期くらいに育てた子だ。違うやり方でね。あれは……失敗作なんだ」”



「………」

「ここにいろ。いいものを見せてやる」

「……いいもの?」


天の問いに、悠はふん、と鼻を鳴らしてから続けた。


「――TRIGGERの、おまえの終幕の合図だ」

「………」

「この街にいるのは移り気で、馬鹿で、無責任で、軽薄な奴らばかりだ。そいつらに振り回されるおまえも」

「……九条さんは、キミを失敗作だと呼んでいた。心当たりは?」

「オレが失敗作なんじゃない!失敗作は、おまえの方だ……!馬鹿な連中のために歌って、馬鹿な連中のために踊って、そんなことを幸せだと思い込んでる!おまえの手元には何も残らないのに!」

「……。キミが馬鹿な連中って呼ぶのは、もしかしてファンのこと?」

「そうさ!教えてやるよ。おまえと、オレと、どちらが正しいか」




瞬間、街中から音楽が流れ始めた。

そして、駅ビルには大規模なプロジェクションマッピングが映し出される。まるで、街中がテーマパークになったような、そんな錯覚に陥ってしまいそうだ。

3、2、1・・・とカウントダウンが始まれば、街頭テレビには四人の人影が映し出された。そして、駅前のステージにその四人が現れる。

群衆が、歓声に沸く。
スポットライトが四人を照らす。

歓声を浴びながら、露わになった四人の姿に、街中が一体となって騒ぎ始めた。

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