第14章 追憶の幻想曲
「了さん。ツクモプロダクションの社長就任、おめでとうございます」
高級マンションの一室。
月雲了の家には、四人の男たちが集められていた。
「ありがとう」
了が妖しげな笑みを浮かべてから、愉しそうに続ける。
「さて。チャリティレンソンの頃にすべてを仕上げるとして、まず、見せしめを決めよう」
「見せしめ?物騒だな」
「僕に逆らったらこうなるよー、というサンプルだ」
了の言葉に、その場にいた四人はごくり、と息を呑んだ。
「あちこちで戦うのは面倒くさい。みんなが一気に戦意を失うように、最初に英雄を堕としておくんだ。やるなら、ブーム中の彼等がふさわしい。ブームなんて始まってしまえば、終わるしかないものなんだけどね。僕の気分で終わらせられることを見せつけてやろう」
言いながら、持っていたグラスを見つめて微笑む。
「IDORiSH7はまだ若い。いつでも叩き潰せるグループだ。見せしめには向かないね。零も今回は除外。デザートは最後のお楽しみだと決めているからね。Re:valeとTRIGGER、君たちを召喚するための生贄はどっちがいい?」
了の質問に、狗丸トウマが口を開いた。
「TRIGGER」
トウマの答えの後に。棗巴波が続く。
「Re:valeですね。人望が厚い人物は、早めに退場していただいた方がいい」
そして、御堂虎於がだるそうに答えた。
「俺はどっちでもいい。悠、おまえの票で決めろよ」
虎於が言えば、四人の中の最後の一人が静かに口を開く。
「……決まってる。TRIGGERだ」
―――亥清悠。それは九条家の前で、天に捨て台詞を吐き捨てた少年だった。
「ぱんぱかぱーん。決まりだね。TRIGGERを横取りしよう」
了の言葉に、トウマが食い掛かる。
「横取り!?話が違う!俺はあいつらと同じ事務所でやる気はないぞ!」
「まあまあ、見てなさいって。もう種はしっかり撒いてある。あとは芽が出るのを待つだけだ」
そう言って了は、月夜にグラスを掲げる。
狂気と破壊へのカウントダウンが、今、始まろうとしていた――。