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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第12章 未完成な僕ら




『……百……』

「………」


了の部屋を飛び出してから、百は零の手を引いたまま、何も喋ろうとしなかった。
ただひたすらに早足で前へ歩いていく百の背中を見つめながら、知夏は駆け足でついていく。

マンションのエントランスを出たところで、百がぴたりと立ち止まった。そんな百の背中に零の頭がこつん、とぶつかる。


『…っいた』

「………零。」

『………はい…』


百は前を向いたまま。
零から百の表情は見えない。

少しの間沈黙が流れてから、百は小さく口を開いた。


「………なんで……っ…なんで、こんな事したの……」

『………』



百の声は震えていて。


――私は、また。百のことを傷つけてしまったのかな。
そう思うと、自分がどうしようもなく情けなくて、ぶん殴りたくなるくらい自分に苛立って、涙がぼろぼろとあふれてきて。


『………百が……百が危険な目に遭うの、嫌だったんだもん……っ……百と千ちゃんが喧嘩するのも……二人には笑ってて欲しかったんだよ……っ…いつも、二人に守ってもらってばかりの……役立たずの私は、もう嫌だったんだよ……っ』

「……馬鹿!!」


瞬間、ぎゅうう、と抱きしめられて。

百の匂いが、鼻いっぱいに広がって。

なんだか久しぶりに感じる愛おしいぬくもりに、どうしようもなく満たされた。


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