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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第10章 空を覆う雲






「……零」


ぎゃあぎゃあと怒っている零の腕をおもむろに取って、ぐいっと引っ張った。
バランスを崩した彼女は驚いたように目を見開きながら、そのままオレの胸の中にすっぽりと納まった。

ぎゅうう、と彼女の体温を堪能するように抱き締めて、さらさらの髪に顔を埋める。


「好き。大好き。愛してるっ!」


耳元でそう言えば、先ほどまでぷんぷん怒っていた零ははあ、と仕方なさそうにため息を吐いた。


『……もう』


照れてる彼女の顔が容易に想像できて、胸がきゅん、と締め付けられる。
毎日恋をするどころか、毎時間、いや、毎秒、彼女に恋をしている気がする。

抱き締めていた腕をゆるめて、彼女の顔を覗けば。やっぱり頬を桃色に染めて、小さな口を尖らせていて。そんな彼女の可愛い唇に、ちゅ、と口付ける。

ずっと触っていたくなるすべすべの肌とか、柔らかな唇の感触とか、さらさらな髪の毛とか。

全てが未だに夢みたいだけど。

それに応えるように背中に回された腕が、優しい声が、その甘い香りが。

全部現実だよって言ってくれてるみたいで。



オレは今日も。

そんな彼女に酔いしれて、飽きもせずに繰り返し恋をするんだ。


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