第10章 空を覆う雲
ゼロアリーナのこけら落としが大成功に終わり、空前のアイドルブームが世間を賑わせていた。
こけら落としのトリを務めた王者Re:vale、MCを務めた零は勿論のこと、TRIGGERにIDORiSH7も負けじと人気を集めている。
今日はそんな今を時めく人気芸能人や大御所有名人を集めた、”あけぼのテレビ開局50周年パーティ”が開催されていた。
「すごい人ね。さすが、あけぼのテレビ開局50周年パーティとなると有名人ばかりだわ」
TRIGGERの付き添いに来ていた姉鷺が、思わず感嘆の声を漏らす。
「こういうところは緊張するな…」
「龍、今夜は飲まないで」
「Re:valeと零とIDORiSH7もゲストで招待されてるんだろ?あいつら、どこにいるかな?」
言いながらきょろきょろと辺りを見回す楽に、姉鷺が注意をするように強い口調で声を掛けた。
「楽!社長からの伝言よ。世間の声に流されて、他の事務所のアイドルと馴れ合うな」
「……うるせえな……」
「今年のTRIGGERの目標は、IDORiSH7を徹底的に突き放した上で、ブラホワで王者と女王なんて呼ばれてるRe:valeと零に勝利すること。あいつらを引き摺り降ろせるのは、あんたたちしかいないんだからね!」
「総合優勝者と準優勝者のRe:valeと零と対決するには、総合部門にノミネートされなきゃいけないけどな」
楽の言葉に、天が口を開く。
「Re:valeと零以外で強敵になるのは、花巻すみれさんじゃない?うちの番組にもゲストできてくれたヒットメーカーの女性シンガー。誰が相手でもベストを尽くします。零とRe:valeを超えて、頂点に立つ」
そういった天の顔は、いつにも増して真剣だった。