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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第7章 心音に触れられない




―――けれど。それからも、百の声が出ることはなかった。






『……待って、百!!』

「………っ」


スタジオの廊下を、衣装のまま駆けていく百と零。後ろからはその二人を追いかけるようにして、天が駆けてくる。


「あれ……零ねぇに天にぃ?二人が追い駆けてるのは…百さん!?」


同じく収録に来ていた陸と一織が、三人の姿を目で追う。


「収録の前半はTRIGGERとRe:valeと零さんでしたよね。まさか、また声が……」

「…っ行ってみよう!」


陸と一織も、三人の後を追い駆けた。





* * *




「零ねぇ!天にぃ!百さん!」


三人が入って行ったのは、Re:valeの控室だった。
陸が勢いよくその扉を開けば、そこには俯いた百を心配そうに囲む零と天の姿があった。


「……っ、……また……、また、歌えなかった……」


百の悲哀に満ちた声が、控室のなかで静かに響く。


「あ……。あはは。夢かな?すごい嫌な夢だなー!零、オレのほっぺたつねってみて」

『……百……』

「わかった。OK。自分でやる。ひたたたたっ……っ!全力で痛かった。全力で現実。………どうしよう……」

「お医者さんはなんて言ってるんですか?」

「……どこも悪くないって。精神的なものじゃないかって。ふふ。オレのハートってやらかし系」


百の言葉に、一織が心当たりはないのかと尋ねる。


「ないよ!モモは元気だよ!オレが幸せじゃなかったら、誰が幸せだっつのってくらい、超ウルトラハッピーキングダムだよ。なのに、ね……」


言ってから、百は眉を下げながら零を見上げる。
零が右手で百の背中を優しくさすると、百は零の左手をぎゅっと握った。

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