第6章 ブラッドオレンジ(越前リョーガ夢/悲恋)
キミに初めて会った日を今でも覚えてる。
あれは暑い夏の日。
私の父は果物農家をやっていて
特にオレンジが一番の売り。
学校が休みの日は、お手伝いするのが中谷家の
決まり。
オレンジの剪定作業中に
柵の外から声を掛けてきた人
「そのオレンジ旨そうじゃねーか。
1個俺に譲ってくれねーか?」
「え…?」
スラッとした長身
ちょっとチャラそうな人
最初はそんな印象だった。
「あの、私じゃ決められないので諦めてください」
「なんだよ、1個くらい良いだろ?…な、頼むよ。俺オレンジ常に持ち歩くくらい大好物なんだよ。」
【オレンジ好きな人に悪い人は居ない】って
小さい時から父に刷り込まれていた私は
「…ふぅ。わかりました。」
と男の人に美味しいオレンジを見極めて、渡した。
「旨そうなの選んでくれてサンキューな。あ、俺は越前リョーガだ。アンタ、名前は?」
「中谷莉那です。」
「莉那か、可愛い名前だな」
二カッと笑うリョーガに
心を一発で射ぬかれてしまっていた。