第31章 幸せ
そんな二人の様子に私は涙がこぼれないようにこらえるので精一杯だった。
だけど兵長がチラリと私の方を見て目配せをしたので、ハッとして目元を拭うと、脇に抱えていた絵を二人に差し出した。パラリと布を解いて中から絵が現れると、それを見たペトラの両親は一瞬泣くのを忘れたように目を見開いて絵を見つめた。
それほど大きくないキャンバスに描かれた、ペトラの顔。まるで今にも笑いかけてきそうな穏やかな彼女の表情に、両親は思わず声を失って、それから大声を上げて泣き始めた。
「ペトラアァッ!!」
二人は肖像画にすがりつくようにして泣いた。その姿を見たら私もついに耐え切れなくなってしまって、ボロボロと涙がこぼれていった。そんな私の様子に気づいた母親が、その細い腕を回してそっと私の身体を抱いてくれた。
「…あなたが、ラウラさんね?いつもペトラの手紙に書かれていたもの。すごく絵が上手い子だって。あの絵を見れば、ペトラがどれだけ兵士として誇りを持って働いていたのかが分かるわ…本当にありがとう」
そう言ってにっこりと笑った笑顔は、まさにペトラと瓜二つだった。それを見た瞬間、私はもうこらえきれなくなってしまって、思わずペトラの母親に抱きついて泣き始めた。
しゃくりを上げながら子どものように泣きじゃくる私の頭を、ペトラの母親はまるで娘にやるかのようにして何度も何度も撫でてくれたのだった。いつの間にかその横には父親の姿もあって、私たちはしばらくの間抱き合って泣いたのだった。