第25章 トロスト区襲撃想定訓練
超大型巨人によるシガンシナ区襲撃から、もうすぐ5年。
その間私たち兵団は、再度襲撃があった時のことを想定し、何度も訓練を重ねてきた。
今日はトロスト区が襲撃された場合の想定訓練が、訓練兵団を含む全兵団参加で行われていた。
現時点で、次に襲撃を受ける可能性がもっとも高いのはトロスト区であると考えられているからだ。
来月に控えている壁外調査の直前になるので準備が大変だけど、気持ちを引き締めるいい機会になりそうだ。
私も当然ながら訓練に参加し、自分に与えられた役割を再確認した。有事の時にはいつでも迅速に動けるよう、何度も頭の中でシミュレーションを繰り返した。
朝早くから始まった訓練は、日暮れ頃になってからやっと終了した。
一日中続いた訓練に、皆一様に疲労の表情を浮かべている…と思ったのだが、訓練兵団の若者たちはまだまだ元気が有り余っているようだった。
何が発端なのかはよく分からないけれど、夜食対決をすることになったらしいのだ。しかも、勝敗を決めるのはピクシス司令だ。
訓練兵たちが異様に盛り上がっているので何事かと思ったら、どうもそういう話になっていたらしい。
私の傍らにいたリヴァイ兵長が小さく舌打ちをする。
「チッ…ガキどもが。馬鹿なことをしてやがる」
「まぁまぁ…面白そうじゃないですか」
眉を寄せる兵長に、私は苦笑いする。
兵長はそう言うけれど、私は面白そうだと思った。
聞いたところによると対決するのは、ジャン・キルシュタインという男性兵士と、サシャ・ブラウスという女性兵士らしい。
どちらが勝つのだろう。勝負は深夜、大広場で行われる。ピクシス司令がどんな判定を下すのかも気になるし、見に行ってみようかな。