第13章 葛藤
菅原(どうする…誰に上げる…もう一回旭に上げて止められたら…)
そんな菅原の迷いに気付いた影山がネットの向こう側で叫んだ。
&影山「菅原さんっ!」
菅原(影山と…大鷲?)
「もう1回!決まるまでっ!!」
2人は旭にラストボールを託せと言った。しかし、トスを呼んでいない旭に向かって一方的にボールを託し3枚ブロックと勝負させるなんて菅原には出来なかった。また彼を傷付ける結果になるのが怖かったのだ。
菅原(ここは嶋田さんのバックアタックで…)
躊躇した末、嶋田に視線を向ける菅原。しかし、トスを上げる寸前菅原の後ろで旭が叫んだ。
旭「スガアァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!! 」
菅原「!?」
旭「もう1本ッッッ!!!」
旭の呼び声に菅原の身体が自然に反応する。ああ、エースが待ってる。エースがトスを呼んでる。
菅原「旭っ!!」
ネットから離した高めのトス。何本も何本も上げてきた、旭が一番得意なトス。何の変哲もない単純なトスだが、菅原は精一杯丁寧に上げ、ラストボールを旭に託した。
月島「君、向うのチームに肩入れしてんの?悪いけどまた止めるよ?」
影山「当然だ。手なんか抜いたら何の意味もねえよ!」
「全力で止めます!!」
田中「うおおおおっ!」←感動で言葉も出ない様子
ネットの向こう側には先程と同じように3枚ブロックが待っていた。しかも、本気で阻止する態勢だ。
旭は自陣コートを見た。リベロの頼もしい背中の守り、自分の為の一番打ちやすいトス。これは皆が一生懸命繋いだボールだ。そんな
単純で当たり前のことを自分はいつの間にか忘れていた。
旭(俺は一人で戦っているのではない。託されたラストボール。何度壁にぶち当たろうとも打ちきる!打ち抜いてこそエースッ!!!))
跳んだ旭の目の前には3枚の壁。しかし、旭は恐れなかった。全力で壁に挑み壊す!圧倒的な重量感を持つスパイクがブロックを破りボールが床に叩き付けられた。
たった1人で3枚ブロックを打ち破る強さ。それを目の前で見た日向は慄きと同時に目を輝かせる。
烏野エースが今、復活した