第38章 満月
「うわぁ〜!!花火だあ!木兎さんっ、花火があるって知っててここ連れてきてくれたんですか!?」
くるっと再び体制を変えれば、柵を乗り越えそうなくらい前のめりになり目の前に上がる煌びやかな光に目をキラキラとさせる
木兎「花火タイミング!!!…えっ?あ、ああ〜あーたりまえだろー!あっはははは!」
特に木兎は花火が上がるとは知らなかったらしいが、気付かれていないのでそのまましらを切る
「お祭りも花火もほんっっと久しぶりだなぁ〜……」
「おかぁさーん!こっちこっち!」
「こーら、走らないの!」
「みう花火だーいすき!お祭りも!ね、ママ、パパ!楽しいねぇ〜」
遠くの方から親子が楽しそうにこちらへと向かってくる
「……」
空を見上げていた私は目線をその親子へと向ければ、その姿にふと昔の自分と両親を重ねてしまう
「ねぇ〜、わたあめといちご飴食べたいな〜!」
「ほーんと、はそればっかだなぁ」
「ふふふっ、花より団子ね」
「っ?……おーい!」
「………」
遠くから誰かが私を呼ぶ声がした私はハッと我に帰る
木兎「ってば、おいおい、大丈夫か?」
「へっ??あれっ、私……今ぼーっとしてた…」
木兎に名前を呼ばれた私は目をパチパチとさせ木兎の方を見る
木兎「どーしたんだよ、いきなりあの親子の方見てなんか難しー顔してたぞ?」
眉間にしわを寄せ私の顔を真似してその様子を伝える木兎
「あっ…すいません…なんでもないです…ちょっと、昔のことを…」
木兎「ん?昔?なんだ昔って」
ぐいぐいと聞いてくる木兎に私は押されてしまい、あまり思い出したくない過去を思い出しその場から逃げ出したくなった私は木兎の手を振り払う
「ご、ごめんなさいっ!ちょっと…1人にさせてくださいっ……」
私はそう言って木兎の体を少し押しては走って逃げるようにそこから居なくなる
木兎「お、おいっ!!」
木兎は私の後ろを追いかけようとするも人混みに紛れて見失ってしまう