第5章 先輩編
その時、グラウンドの方から先輩を呼ぶ声がして、「やべ、俺行かなきゃ」と先輩は焦ったように言う。
(・・・残念だな)
私のそんな想いなんて先輩は気づいているはずもなく。
ふと、頭に彼の手が乗っかる。
そして、くしゃっと私の髪の毛を乱しながら、
「じゃあ頑張ってね。 七瀬ちゃん!」と柔らかな笑顔で言い残して、グラウンドの方へ走って行った。
(・・・・・・名前、知ってくれてたんだ・・・!)
気が抜けたようにその場に座り込む。
ふにゃり、と自分の口角が上がるのが分かる。
先輩が触れたところが妙に熱い。