第9章 つんでれアクアマリン【A×O】
「休みの日は他に何してるの~?」
「人の髪を切るのってドキドキしない?」
「朝も夜もカット練習してたらご飯はどーするの?」
そのあとも、ずっと。
相葉ちゃんから何やかやと
質問攻めにあい。
気がつけば
だいぶ気持ちよく喋ってしまっていた。
こんなことも…普段はないのに。
だって…
どちらかと言えば
喋るのは苦痛だったりするから
可能な限り
相手に喋らせておくようにしてて。
自分は最低限のことだけを答えるという
徹底的な聞き役が絶対的に楽チンだ。
でも……
不思議なことに
コイツといると
自然に言葉がこぼれる。
その穏やかな瞳の中にある
優しく揺れるナニカが
人と関わりたくないはずの俺の心を
スルスルと簡単に解ホドいてしまう。
なんなんだ…ホントに。
時々グラスを傾けながら
ずっと嬉しそうにニコニコして
俺の話を聞いているコイツは…
俺と…
どうなりたいんだろう……
抱イダいていたイメージとは違って
何事にも一生懸命で誠実で…
そんなキラキラ芸能人の部屋で飲んでる俺は…
コイツと…
どうなりたいんだろう……
「ちょっと…トイレ」
いろいろとリセットしたくて
フラフラと立ち上がった。
「あ、えとね…玄関の方に戻って…」
ヤツが後ろで説明してるのを
ろくに聞きもしないで
リビングを出てすぐのドアを
何気なくガチャリと開けた…ら。
そこは……
寝室…だった……
なんとなく甘いアロマの香りと
ベッドにクシャリと置かれた薄い羽毛布団
今朝…ヤツが起きたままの
そのまんまの状態、ってこと…?
ドクリ…と。
なぜか心臓が大きく脈打って
それから
とてつもなく急激に恥ずかしくなって
慌ててそのドアを閉めて振り向いたら
「わぁぁっ」
「おっと!」
すぐ後ろに来ていた相葉ちゃんと
おもくそ正面衝突して。
すっぽりと…
ヤツの腕の中、だった…