第8章 麗しのタンザナイト【M×O】
【潤】
俺は困っていた
すご~く困っていた。
なぜなら、勤め先のイタリアンレストランが
昨日で閉店になってしまったからだ。
どちらかと言えば老舗の、
昔からの常連客を抱えたレストランで、
俺もいつか一人立ちすることを夢見て、
修行させてもらっていたんだ。
人のいいオーナー夫婦の元で働くようになって3年……
その老舗イタリアンは、
相次ぐライバル店出店の煽りで
経営が難しくなってしまったんだ。
こ洒落た内装の、若者受けする店や、
見映えばかりが派手な、俗に言う
『映える』料理を提供する店には敵わなかった。
時代の波……と言ってしまえば、
それまでだけど……
オーナーはしきりに申し訳ないと頭を下げた。
俺は笑顔で『大丈夫だ』と、働いた分の3分の2の給料を受け取り店を後にした。
本当は、全く大丈夫じゃない!!
2か月分溜まったアパート代を払ったら、
終わっちゃう…(´;ω;`)
緊急事態なんだよ、マジで///
直ぐに新しい、割りのいい仕事を探さなきゃ……
そこで出会ったのが、
バイト紹介のアプリ…
何の気なしにインストールして、
そこで見つけたのが、
『日給20,000円
住み込み、短期3か月、
料理のできる20代、男性』
いいじゃん!!
おいしい……♡
内容にやや、疑問もあるし、
怪しさも感じはするけど…
住み込みっていうのも気に入った。
今のアパートの大家さんに
何度も家賃待ってもらってるから、
正直気まずい…
ここんところ、出て行って欲しいオーラを感じてた。
しかもだ。
このバイト、アップされたのが、俺が見る1分前。
運命だ…
まさにこれは、神様のお導きに違いない!
直ぐにコンタクトを取らないと、
別のやつに取られてしまう!
その1分後、俺は迷わずそのバイトにアクセスした。
雇用期間の3か月の間に、
また別の仕事をゆっくりを探せばいい…
翌日…俺は指定された場所へと向かった。