第1章 魅惑のルビー【S×O】
その週末の土曜日。
入っていた仕事がひとつキャンセルになり、
珍しく8時前に家に帰ってきた。
「お帰り~♪」
「お~、ただいま!来てたんだ…」
予告もなく俺の帰りを待っていた智くんに、
着替えに向かいながらも、ニマニマが止まらない。
「翔く~ん、夕飯作ってみた!食べよ♪」
「マジで~?やった!何~?今日…」
手を洗ってダイニングに行くと、
そこには綺麗に並んだ刺身が大量にあった。
「わあ~、旨そっ!何これ?」
「これはね~、鯛と、そっちはイナダ…
後これが、鯵ね!」
それらの魚を説明する智くんは、
かなりのドヤ顔で俺を見た。
分かってたけど、一応ね…(^^;
「もしかしてこれ…」
「そっ!!俺が昨日釣ったの~」
「へ~、凄いね!!智くんが全部釣ったの??」
「あ~、黒鯛はね、シゲが釣ったんだけど…」
シゲ??加藤か…
シゲと行ったんだ?
じゃあ、この間の電話はシゲか…
凄い楽しそうに、
親し気に話してやがったけど(-_-;)
急に黙った俺に、智くんも流石に気付いたらしく、
「あれっ?シゲと行くって、言ってなかったっけ?」
「…聞いてない…」
抑揚のない俺の声に、焦った智くんは、
「ねえ、食べよっか!ビールでいいよね?
あっ、白ワインも冷えてるよ~、翔くんの好きなヤツだけど、どっちにする~?」
………あなたが饒舌な時ってさ…
「なんか、やましい事でもあるの?」
じとっと上目遣いに睨むと、智くんは、
「え~っ?何が?何言っちゃってるの?」
……なに?その狼狽えっぷりは(ー_ー)!!
気に入らないぜ…
「ほら、食べよ!食べよ!!」
智くんに促され、気持ちはスッキリしなかったけど、
白ワインで乾杯して、智くんがさばいた刺身を口に運んだ。
………チクショー(≧▽≦)
悔しいけど、旨いぜ///
旨いアテと冷えたワインで、
まあ、シゲとデートの件は忘れてやってもいいかな?
と思い始めていた。