第5章 復活アメジスト【S×M】
嫌いになって、
大喧嘩して、別れた訳じゃない…
何となく…
気が付けば…自然に離れて行った。
話しあったことも、
納得しあった訳でもない俺たちは、
……少なくとも、俺は、
心のどこかで、まだ潤を
諦め切れないでいたのかもしれない…
そして、今……
手を伸ばせば、いつでも届くところにいる…
………潤……
俺は、どうしたらいいのかな?
おまえは……
俺のことなんか、もう忘れた?
あんな小芝居しやがって…
そう心の中で呟いてみても、
ザワザワする胸の中を、押さえることができない。
あんな白々しい猿芝居だったけど、
俺の心を揺らすには、十分な起爆剤になった。
お陰で、ちょっとドキドキして、
潤の笑顔が眩しくて…
「翔くん…」
その時、潤が俺を呼んだ。
それまでと違った、
俺の胸の中でよみがえって響いてた、あの声で…
「んっ?」
「翔くんってさ…今……」
そこまで言って、潤はキュッと口を噤んだ。
何??
俺が、今…
何を知りたい?
「何だよ~?途中で止めんなよ~」
そう笑って見せたけど、心の動揺を隠せなくて。
「……今、翔くん、幸せ、なのかな~?っと思って…」
「えっ?」
……何だよそれ?急にそんなこと…
不意に投げられた潤の質問……何て答えるのが正解なのか、俺は頭をフル回転させた。
「し、幸せだよ~!嵐のこと、こんなに応援してもらって、コンサートもたくさん、やらせてもらって…」
「そうじゃなくって…」
「えっ?」
「嵐としてじゃなくてさ…翔くんは…
櫻井翔個人は、幸せなのかな?って…そう思って」
「………」
潤は、そう言ってから、
真っ直ぐに俺を見つめた。
その目に、俺は言葉を無くした。
………潤…俺……
俺はさ……
その時、スタッフが潤を呼びに来て、
俺たちの時間は途切れた。
残念だからなのか、ホッとしたからなのか、
俺は胸の前でギュッと拳を握った。