第38章 【花巻】夏の憂鬱は夜空に託して
「俺、ただの友達としてしか見られてないもんだと思ってたからマジで嬉しいんだけど」
「こっちの台詞だよ。私だって嬉しい」
ゆっくりともう一度、“ずっと花巻のことが好きだった”と伝える。その瞬間、腕の中へと引き寄せられていつの間にか花巻にしっかりと抱き締められていた。
「が泣き止むまでこうしといていい?」
「…誰かに見られるよ」
「見せつけとけばいいじゃん。俺しばらく放す気ないし、あいつらも空気くらい読むだろ?」
「…でも、いいのかな」
耳に触れる言葉が何もかも嬉しくて、初めて感じる花巻の体温に体は溶けてしまいそうだ。
「だって嬉しいじゃん。…最高の夏の思い出になった」
「私も…」
「だからもうちょっと。このままでいたい」
「…うん」
花巻の腕の中で静かに時間が流れていく。
熱くなった体を涼しい風が冷やしていくのも、水が流れていく音も遠くで聞こえる虫の声も頬を伝う涙の感覚だって、この先一生忘れたくないってそう思う。
夏の憂鬱は夜空に託して、二人で初めて見た星空を真新しいページに記していく。
fin.