第30章 【孤爪】幼馴染の先。[R18]
がらがら、と冷蔵庫がなにかを吐き出す音がした。
数時間前に製氷のボタンを押したものがやっとできたようだ。
それと同時。
ぴんぽんと玄関から鳴るチャイムがワンルームの部屋に鳴り響いた。
外には聞こえないはずなのにはいはいと返事をしてしまうのが自分の母親を思い出させ、くすりと笑いながら玄関に向かった。
ドアを開ければ幼馴染の研磨。
昨日研磨のお母さんから電話をもらった時はびっくりしたけれど、まあそこは幼馴染だし、ね。
「部活、お疲れ様。研磨?」
「ん…これ、クロが。」
お土産だろうか、スーパーかコンビニの袋を腕に釣り下げ靴を脱ぐ研磨から袋をもらうと、中身を見る。
さすがクロ。
私と研磨が好きなフレーバーのカップアイスを差し入れてくれている。
これ以上溶かすのも嫌だからと先に玄関先にある冷凍庫にしまい込み、幼馴染の研磨を部屋の中に促した。
「急にうちに泊まるなんてどうしたの?おばさん夜勤?」
「ううん、親戚のとこ。お盆には早いけど盆休み取れなかったからって。」
「そう。今日カレーにしたけど大丈夫?」
「うん。のカレー好き。」
1DK、狭い我が家のベッドに遠慮なく座り、ちらりと私を見る2つの瞳。
「準備で少し時間かかるけど…ゲームしてる?」
いつものようにゲームをしたいのだろうと思いそう言えば、研磨は枕がわりのクッションを抱え、ぽそり、呟いた。
「ううん、みてる。」
「わかった。じゃあ先に飲み物準備するよ。」
立ち上がりキッチンへ向かうと私は洗ってあったグラスに、先ほどできあがった氷を入れサイダーを注ぐ。
そしてそのグラスをベッドに腰掛ける研磨の前に置いた。
「暑いでしょ?飲んで待ってて?」
ガラスのサイドボードに当たりかちりと鳴るグラス。
それと同時に中の氷が崩れ、かららんと鳴った。
「ありがと。」
「じゃあ仕上げちゃうね?」
そう背中を向けてキッチンへ立つと鍋の乗ったコンロに火をかけた。