第4章 【菅原】星は僕らの心に降り注ぐ。
視線は空に向けたまま、は菅原の手を握る手に少しだけ力を込めて口を開いた。
「菅原、最近ずっと難しい顔して、下を向いている事が多かったから…」
はっきりと本人から聞いたわけじゃない。
だけど、何かを悩んでいるんだって事は自分にも何となくわかって。
「………うぉ…っ?!」
は菅原の手を掴んだまま、レジャーシートへ仰向けになって寝転んだ。
「この方がよく見えるよ」
「そう、なんだろう…けどさ、」
今日、あの場所でを見つけてからこうしてドキドキさせられてばかりだ。
妙に意識してしまって隣に寝転ぶ彼女の方を見られない。
それでも繋がれた手は、未だにそのままだ。
肩と肩が、触れ合う。
そこに意識が集まるのを感じながら菅原は改めて空を眺める。
流れる星に一つ、息をついた。
「ホント、すげーなぁ…」
満天の星空、時折流れる星。
自分の悩みなんて小さいと思えてくる。
「菅原、私は…菅原の悩んでる気持ちを、わかってあげられないかもしれないけど…でもね、」
また一つ星が流れて、それを見届けた後に二人の視線は絡み合う。
「そうやって、星を見て一息ついて…顔を上げてくれるなら……勇気を出してここに誘って良かったって思えるよ」
「…………っ、」
の言葉がじんわりと心の中に拡がっていく。
顔が…熱い。
でも、目の前のも赤い顔をしてる。
もしも、もしもだ。
が俺と同じ気持ちでいてくれているのだとしたら。
「…………」
菅原は開きかけた口をグッと結んでそっと目を閉じる。
でも、その気持ちを伝えるのはきっと今じゃないと思うんだ。
「…ギリギリまで部活残ることにしたんだ」
「…菅原」
「良かったらさ、試合、観に来て欲しい」
繋がれた手に菅原は力を込めた。
「今の俺は…に心配掛けちゃうくらい頼りないヤツなんだよな。でも…しっかり前を向くから、そしたら」
また一つ、二人の上を星が流れた。
「俺の気持ち、ちゃんと伝えさせて」
「……うん!……待ってる」
そう笑って答えて、再び二人で夜空を眺めた。
降り注ぐ星の下、無数の光の放物線は二人の心をきっと繋ぐから。
END.