第4章 【菅原】星は僕らの心に降り注ぐ。
「「「おつかれーっした!!」」」
夏、
烏野高校男子バレー部はインハイ予選の悔しさをバネに厳しい練習に打ち込んでいた。
「あっっっぢーーー!!」
「田中~…口に出すと余計に暑さが増すだろ!」
「だけどよ……ん?あそこに黄昏ている美女が……!」
練習後、日も暮れてきたところで田中と木下が少しでも涼もうと開いた扉の前にいると少し離れた木陰に空を見上げている女生徒の姿があった。
「誰だ…?3年生かな…?」
「お前ら、何見てんだよ?」
「スガさん、あそこに美女が…!」
「え?」
田中と木下に促されて菅原は扉の外に視線を送る。
「あれは……」
木陰でじっと空を見つめる女生徒。
時折、風で煽られる落ち着いたブラウンの髪を手で押さえてはその大きな瞳で空を見上げていた。
まるで、何かを心待にしているように。
「…?」
「あの美女スガさんの知り合いッスか?!」
「まさか彼女……っ!!」
「ちっ…違うって!!クラス…メイトだよ」
『彼女』と言うワードに菅原は動揺したが、無理矢理に平静を取り繕う。
そうなったらいいな、と何度か思った事はあった。
でも勉強や部活に追われていた最近はほとんどの事は考えていなかったのに。
ましてやインハイ予選三回戦で敗退、春校まで残るかどうか真剣に悩んでいた直後だ。
突然また自分の心に入ってきた彼女。
まるで風邪を振り返したような感覚だった。
「何、やってるんスかね…?」
「うーん…?」
「そろそろ片付け始めるぞ!!特に日向、影山!!」
澤村の大きな声で菅原達の意識は体育館へと戻される。
「お、片付けだ。行くぞ田中、木下」
「「ウス」」
それから片付けを終えて着替えを済ませ、部室から出た菅原はふとの事を思い出し彼女を見かけた場所へと一人向かった。
もう日暮れだし、さすがにいないよな。
そう思いながら視線を向けた菅原は驚いて声を上げる事となる。
「…!?」
「……っひゃ!?……っと、菅原…?」
いないと思って覗いたのはずが部活後に見かけた時と変わらず、同じ場所にいたにとても驚いた菅原だった。